日本国憲法 (現行)

提供: 日本国憲法の再誕
2020年2月15日 (土) 19:05時点におけるNcoj21 (トーク | 投稿記録)による版
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先: 案内検索

目次

日本国憲法

(前󠄁文󠄁)

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成󠄁果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公󠄁正と信義に信賴して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、壓迫と偏狹を地上から永遠󠄁に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐󠄁怖と缺乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認󠄁する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道󠄁德の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と對等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達󠄁成󠄁することを誓ふ。

第一章 天皇

第一条

天皇は、日本国の象徵であり日本国民統合の象徵であつて、この地位は、主権の存する日本国民の總意に基く。

第二条

皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを繼承する。

第三条

天皇の国事に関するすべての行為には、內閣の助言と承認󠄁を必要󠄁とし、內閣が、その責任を負ふ。

第四条

  1. 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
  2. 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。

第五条

皇室典範の定めるところにより攝政を置くときは、攝政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前󠄁条第一項の規定を準用する。

第六条

  1. 天皇は、国会の指名に基いて、內閣總理大臣を任命する。
  2. 天皇は、內閣の指名に基いて、最高裁判󠄁所󠄁の長たる裁判󠄁官を任命する。

第七条

天皇は、內閣の助言と承認󠄁により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。

一 憲法改正、法律、政令及び条約を公󠄁布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の總選󠄁擧の施行を公󠄁示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏󠄁の任免竝びに全権委任狀及び大使及び公󠄁使の信任狀を認󠄁證すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認󠄁證すること。
七 榮典を授與すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交󠄁文󠄁書を認󠄁證すること。
九 外国の大使及び公󠄁使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。

第八条

皇室に財產を讓り渡し、又は皇室が、財產を讓り受け、若しくは賜與することは、国会の議決に基かなければならない。

第二章 戦争の放棄

第九条

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠實に希求し、国権の發動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

第三章 国民の権利及び義務

第十条

日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

第十一条

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び將来の国民に與へられる。

第十二条

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不斷の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十三条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に對する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四条

  1. すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、經濟的又は社会的関係において、差別されない。
  2. 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
  3. 榮誉、勳章その他の榮典の授與は、いかなる特権も伴はない。榮典の授與は、現にこれを有し、又は將来これを受ける者の一代に限り、その效力を有する。

第十五条

  1. 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
  2. すべて公務員は、全體の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
  3. 公務員の選擧については、成年者による普通選擧を保障する。
  4. すべて選擧における投票の祕密は、これを侵してはならない。選擧人は、その選擇に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

第十六条

何人も、損害の救濟、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廢止又は改正その他の事項に関し、平穩に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第十七条

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共團體に、その賠償を求めることができる。

第十八条

何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る處罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第十九条

思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第二十条

  1. 信敎の自由は、何人に對してもこれを保障する。いかなる宗敎團體も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
  2. 何人も、宗敎上の行為、祝典、儀式又は行事に參加することを强制されない。
  3. 国及びその機関は、宗敎敎育その他いかなる宗敎的活動もしてはならない。

第二十一条

  1. 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
  2. 檢閱は、これをしてはならない。通信の祕密は、これを侵してはならない。

第二十二条

  1. 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移轉及び職業選擇の自由を有する。
  2. 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脫する自由を侵されない。

第二十三条

學問の自由は、これを保障する。

第二十四条

  1. 婚姻は、兩性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
  2. 配偶者の選擇、財產権、相續、住居の選定、離婚竝びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と兩性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第二十五条

  1. すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む権利を有する。
  2. 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衞生の向上及び增進に努めなければならない。

第二十六条

  1. すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に應じて、ひとしく敎育を受ける権利を有する。
  2. すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通敎育を受けさせる義務を負ふ。義務敎育は、これを無償とする。

第二十七条

  1. すべて国民は、勤勞の権利を有し、義務を負ふ。
  2. 賃金、就業時間、休息その他の勤勞条件に関する基準は、法律でこれを定める。
  3. 兒童は、これを酷使してはならない。

第二十八条

勤勞者の團結する権利及び團體交涉その他の團體行動をする権利は、これを保障する。

第二十九条

  1. 財產権は、これを侵してはならない。
  2. 財產権の內容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
  3. 私有財產は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

第三十条

国民は、法律の定めるところにより、納稅の義務を負ふ。

第三十一条

何人も、法律の定める手續によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第三十二条

何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

第三十三条

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が發し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令狀によらなければ、逮捕されない。

第三十四条

何人も理由を直ちに吿げられ、且つ、直ちに辯護人に依賴する権利を與へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその辯護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第三十五条

  1. 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、搜索及び押收を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて發せられ、且つ搜索する場所及び押收する物を明示する令狀がなければ、侵されない。
  2. 搜索又は押收は、権限を有する司法官憲が發する各別の令狀により、これを行ふ。

第三十六条

公務員による拷問及び殘虐な刑罰は、絕對にこれを禁ずる。

第三十七条

  1. すべて刑事事件においては、被吿人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
  2. 刑事被吿人は、すべての證人に對して審問する機会を充分に與へられ、又、公費で自己のために强制的手續により證人を求める権利を有する。
  3. 刑事被吿人は、いかなる場合にも、資格を有する辯護人を依賴することができる。被吿人が自らこれを依賴することができないときは、国でこれを附する。

第三十八条

  1. 何人も、自己に不利益な供述を强要されない。
  2. 强制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを證據とすることができない。
  3. 何人も、自己に不利益な唯一の證據が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第三十九条

何人も、實行の時に適法であつた行為又は旣に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

第四十条

何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

第四章 国会

第四十一条

国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

第四十二条

国会は、衆議院及び參議院の兩議院でこれを構成する。

第四十三条

  1. 兩議院は、全国民を代表する選擧された議員でこれを組織する。
  2. 兩議院の議員の定數は、法律でこれを定める。

第四十四条

兩議院の議員及びその選擧人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、敎育、財產又は收入によつて差別してはならない。

第四十五条

衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間滿了前に終了する。

第四十六条

參議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半數を改選する。

第四十七条

選擧區、投票の方法その他兩議院の議員の選擧に関する事項は、法律でこれを定める。

第四十八条

何人も、同時に兩議院の議員たることはできない。

第四十九条

兩議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歲費を受ける。

第五十条

兩議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釋放しなければならない。

第五十一条

兩議院の議員は、議院で行つた演說、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。

第五十二条

国会の常会は、每年一囘これを召集する。

第五十三条

內閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の總議員の四分の一以上の要求があれば、內閣は、その召集を決定しなければならない。

第五十四条

  1. 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以內に、衆議院議員の總選擧を行ひ、その選擧の日から三十日以內に、国会を召集しなければならない。
  2. 衆議院が解散されたときは、參議院は、同時に閉会となる。但し、內閣は、国に緊急の必要があるときは、參議院の緊急集会を求めることができる。
  3. 前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以內に、衆議院の同意がない場合には、その效力を失ふ。

第五十五条

兩議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。

第五十六条

  1. 兩議院は、各々その總議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
  2. 兩議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半數でこれを決し、可否同數のときは、議長の決するところによる。

第五十七条

  1. 兩議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多數で議決したときは、祕密会を開くことができる。
  2. 兩議院は、各々その会議の記錄を保存し、祕密会の記錄の中で特に祕密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
  3. 出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議錄に記載しなければならない。

第五十八条

  1. 兩議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
  2. 兩議院は、各々その会議その他の手續及び內部の規律に関する規則を定め、又、院內の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。

第五十九条

  1. 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、兩議院で可決したとき法律となる。
  2. 衆議院で可決し、參議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多數で再び可決したときは、法律となる。
  3. 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、兩議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
  4. 參議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以內に、議決しないときは、衆議院は、參議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

第六十条

  1. 豫算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
  2. 豫算について、參議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、兩議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は參議院が、衆議院の可決した豫算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以內に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

第六十一条

条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。

第六十二条

兩議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、證人の出頭及び證言竝びに記錄の提出を要求することができる。

第六十三条

內閣總理大臣その他の国務大臣は、兩議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について發言するため議院に出席することができる。又、答辯又は說明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。

第六十四条

  1. 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、兩議院の議員で組織する彈劾裁判所を設ける。
  2. 彈劾に関する事項は、法律でこれを定める。

第五章 內閣

第六十五条

行政権は、內閣に屬する。

第六十六条

  1. 內閣は、法律の定めるところにより、その首長たる內閣總理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
  2. 內閣總理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
  3. 內閣は、行政権の行使について、国会に對し連帶して責任を負ふ。

第六十七条

  1. 內閣總理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
  2. 衆議院と參議院とが異なつた指名の議決をした場合に、法律の定めるところにより、兩議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は衆議院が指名の議決をした後、国会休会中の期間を除いて十日以內に、參議院が、指名の議決をしないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

第六十八条

  1. 內閣總理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半數は、国会議員の中から選ばれなければならない。
  2. 內閣總理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

第六十九条

內閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以內に衆議院が解散されない限り、總辭職をしなければならない。

第七十条

內閣總理大臣が缺けたとき、又は衆議院議員總選擧の後に初めて国会の召集があつたときは、內閣は、總辭職をしなければならない。

第七十一条

前二条の場合には、內閣は、あらたに內閣總理大臣が任命されるまで引き續きその職務を行ふ。

第七十二条

內閣總理大臣は、內閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報吿し、竝びに行政各部を指揮監督する。

第七十三条

內閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。

一 法律を誠實に執行し、国務を總理すること。
二 外交関係を處理すること。
三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を經ることを必要とする。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。
五 豫算を作成して国会に提出すること。
六 この憲法及び法律の規定を實施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。

第七十四条

法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、內閣總理大臣が連署することを必要とする。

第七十五条

国務大臣は、その在任中、內閣總理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。

第六章 司法

第七十六条

  1. すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に屬する。
  2. 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。
  3. すべて裁判官は、その良心に従ひ獨立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。

第七十七条

  1. 最高裁判所は、訴訟に関する手續、辯護士、裁判所の內部規律及び司法事務處理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
  2. 檢察官は、最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
  3. 最高裁判所は、下級裁判所に関する規則を定める権限を、下級裁判所に委任することができる。

第七十八条

裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の彈劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒處分は、行政機関がこれを行ふことはできない。

第七十九条

  1. 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員數その他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、內閣でこれを任命する。
  2. 最高裁判所の裁判官の任命は、その任命後初めて行はれる衆議院議員總選擧の際国民の審査に付し、その後十年を經過した後初めて行はれる衆議院議員總選擧の際更に審査に付し、その後も同樣とする。
  3. 前項の場合において、投票者の多數が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は、罷免される。
  4. 審査に関する事項は、法律でこれを定める。
  5. 最高裁判所の裁判官は、法律の定める年齡に達した時に退官する。
  6. 最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八十条

  1. 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、內閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齡に達した時には退官する。
  2. 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

第八十一条

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

第八十二条

  1. 裁判の對審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
  2. 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、對審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の對審は、常にこれを公開しなければならない。

第七章 財政

第八十三条

国の財政を處理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。

第八十四条

あらたに租稅を課し、又は現行の租稅を變更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

第八十五条

国費を支出し、又は国が債務を負擔するには、国会の議決に基くことを必要とする。

第八十六条

內閣は、每会計年度の豫算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を經なければならない。

第八十七条

  1. 豫見し難い豫算の不足に充てるため、国会の議決に基いて豫備費を設け、內閣の責任でこれを支出することができる。
  2. すべて豫備費の支出については、內閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。

第八十八条

すべて皇室財產は、国に屬する。すべて皇室の費用は、豫算に計上して国会の議決を經なければならない。

第八十九条

公金その他の公の財產は、宗敎上の組織若しくは團體の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に屬しない慈善、敎育若しくは博愛の事業に對し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

第九十条

  1. 国の收入支出の決算は、すべて每年会計檢査院がこれを檢査し、內閣は、次の年度に、その檢査報吿とともに、これを国会に提出しなければならない。
  2. 会計檢査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。

第九十一条

內閣は、国会及び国民に對し、定期に、少くとも每年一囘、国の財政狀況について報吿しなければならない。

第八章 地方自治

第九十二条

地方公共團體の組織及び運營に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

第九十三条

  1. 地方公共團體には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
  2. 地方公共團體の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共團體の住民が、直接これを選擧する。

第九十四条

地方公共團體は、その財產を管理し、事務を處理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範圍內で条例を制定することができる。

第九十五条

一の地方公共團體のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共團體の住民の投票においてその過半數の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

第九章 改正

第九十六条

  1. この憲法の改正は、各議院の總議員の三分の二以上の贊成で、国会が、これを發議し、国民に提案してその承認を經なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選擧の際行はれる投票において、その過半數の贊成を必要とする。
  2. 憲法改正について前項の承認を經たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一體を成すものとして、直ちにこれを公布する。

第十章 最高法規

第九十七条

この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試鍊に堪へ、現在及び將来の国民に對し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

第九十八条

  1. この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その效力を有しない。
  2. 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。

第九十九条

天皇又は攝政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

第十一章 補則

第百条

  1. この憲法は、公布の日から起算して六箇月を經過した日から、これを施行する。
  2. この憲法を施行するために必要な法律の制定、參議院議員の選擧及び国会召集の手續竝びにこの憲法を施行するために必要な準備手續は、前項の期日よりも前に、これを行ふことができる。

第百一条

この憲法施行の際、參議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまでの間、衆議院は、国会としての権限を行ふ。

第百二条

この憲法による第一期の參議院議員のうち、その半數の者の任期は、これを三年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。

第百三条

この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官竝びにその他の公務員で、その地位に相應する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選擧又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。